3

26/28
前へ
/1074ページ
次へ
もう話す事はない 会社でも誰にも言わないから 今の啓介にとって それが一番気掛かりなんでしょ? 「ちょ……待てよ」 …………無視 玄関で靴を履き 1度だけ振り返るけど…… 俯いたまま…… 啓介の爪先に目が行く 『足の爪……伸びてるじゃない? 靴下に穴が開いちゃうから 早めに切ってね?』 今朝、お母さんが お父さんに言っていたね…… 手相見のおばちゃん? 私、結婚……まだまだ先みたいだよ? 「啓介の希望するつきあい方に…… ……添えなくてごめん」 ひとつため息をついてから 「電話でもメールでもラインでも…… いつでもいいから 何かあったらすぐ連絡して? 俺、駆けつけるから…… 千鶴……愛してるよ……」 …………ウソつき 小さく頭を下げて 部屋から出る …………ズキズキズキ 心が痛い 『アリガトウゴザイマシタ』 機械の声に見送られ 外に出る ポロッ………… 今頃、涙が溢れてきた 痛くて……痛くて…… 寒くて……寒くて…… …………この夜空に吸い込まれてしまいそう
/1074ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20807人が本棚に入れています
本棚に追加