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「お先でーす」 「失礼します」 背中から何人かの声が聞こえ 顔を上げると 広いフロアにひとりぼっちになってしまった 塾は諦めよう 今夜は夕飯は作らなくていいし 明日、朝に少しでも楽できるなら 準備をしてから帰ろう…… ……疲れた体で慣れない仕事を減らしていく 悪循環 疲労がさらに蓄積されていくのに 目の前しか見えていない私には わかっていない 自分のマウスの音 エアコンの吹き出しの音 書類をめくる音 コツコツコツ…… パンプスの音が静かな廊下から 響いてきて…… 「お疲れ様です!」 「…………はいっ?!」 うわーー!ビックリしたーー …………誰? 扉を見ると…… 「……中岡さん?」 「ねぇ……さっき電話したんだけど?」 さっきかけ直したよ? でもあなたが居なかったんでしょ? 「あぁ、ごめん……忙しくて忘れてた」 メンドーだから、それだけ返す 「忙しいから仕方ないよねぇ~~」 邪魔しに来たの? いちいちイヤミな人…… 「あのさ! 昨日話した同期会 ちょっとでいいから出られない? お願い!今回さ…場所変えて新宿だから ……ねっ?」 場所がどーのじゃなくて そっちのグループが苦手なの! 「んーーー……ごめんね …………無理だと思う」 「とりあえず携帯の番号教えてよ コレ、アタシのだから……」 ……無理矢理交換させられた 22:00を回り…… 『終わったぁぁ~~』……とタクミに連絡 荷物を手に取り 薄暗いエレベーターホールまで行くと 「……任せてよ……大丈夫」 「マジで?」 こんな遅い時間に 電気の消えた給湯室から 声が聞こえた ……さっき聞いたばかり 中岡さんの声だ……
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