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「はい」
我ながらよくここまで不機嫌な声が出せるなと思う。
案の定電話の向こうは動揺している。
今回の遠征中、ケータイを忘れたと言ったら、土田が1台貸してくれた。
「もしもしすみません、こちらは土田さんの携帯ではないですか?」
「そうですけど、今いませんよ」
「そう……ですか。失礼しました」
そういって電話が切れた。
やべっ、用件も名前も聞くの忘れたよ。
「ただいまー」
「おかえり……あのさ、土田から借りた携帯さ、誰にも番号教えてないって言ってたじゃん?」
「うん」
「それがさ、さっきかかってきたんだよ電話が。」
「ほう」
「ほう、じゃねえよ。女だったぞ。誰も知らないはずって思ってたから驚いてちょっと邪険にしちゃったら、ごめんなさいって切られた」
土田は俺から携帯をふわんと取って操作をする。
「わかった。それ俺の嫁だ」
「ええっ? 嫁だって?」
「うん。もう何年も電話なんてかかってこなかったから忘れられてると思った」
「なんかいろいろ混乱してるんだけど……その、わかるように説明してくれる?」
「うんいいよ。えーとどっから話そうかな。あ、俺ってバイじゃない」
そういわれても初耳なんですが。
「えっ、バイってゲイとバイとかのバイ?」
「うん、そう」
男もいけるってことか。まあ土田ならわからなくもないけど。ネットでも野郎に「かわいい」とか言われてるもんな。
まあ正直すごく驚いてるけど、俺は先入観とか持たない主義だからそういうお前も理解するぞ。
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