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「とはいえ、女とつながった事はないし、好きになったのはその美羽さん、あ……嫁の事ね。美羽さんだけだから、ほとんどゲイなんだけど」
そっちのほうかー。男もいけるんじゃなくて男しかいけない方なのね。
だけどそのキレイな顔でつながるとか下品な事言うな。
「で、美羽さんはシングルマザーなんだけど、シングルマザーって大変なのな。アパートの更新のときにちょうど美羽さんの勤めている会社が倒産しちゃって求職中だったんだけど、更新ができないって言われたんだって」
「あー、そういうのって結構聞くよな」
「だろ、ひでーよな。それで比奈ちゃん、あ、美羽さんの娘ね。比奈ちゃんの保育園だってやっと入れたんだから、送り迎えのこととか考えても、そのアパートを動きたくなかったわけだ。だから俺が配偶者として契約更新したんだよ。折を見て離婚届提出しようって言ってたんだけどすっかり忘れてた」
「よく、週刊誌沙汰にならなかったね」
「ま、その辺は周りの人がうまくやってくれたみたいで」
そうなんだ、こいつの周りは何気に信頼できる相手しかいないんだよな。それってすげーことだよな。
「ふーん……でもそこまでしてあげる心意気があるなら、なんか他に方法はなかったんだろうか」
「でも俺美羽さんのこと大好きだったし、美羽さんと比奈ちゃんが路頭に迷うの見てられなかったし。婚姻関係をあげるくらいでその問題が解決するなら安いもんだしね。実際美羽さんにはその他に何も援助してないよ。お金も受け取ってくれなかったし」
「なあ……婚姻関係って言うのはそんな安売りの卵みたいなもんじゃないだろ。それに、好きならそのまま一緒に暮らせばよかったじゃないか」
「そうはいってもね、美羽さんは亡くなったご主人のことずっと愛していて、他の人との恋愛なんて考えられないって言ってたよ。俺もよく考えたら美羽さんに対する気持ちは恋愛というよりは同志みたいっていうの? そういうのだってわかったから」
うわー……土田になびかない女もいるんだ。顔みてみてーな。
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