揺れる心

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「片瀬さん。仕事やってもらっていいかしら?」 制服に着替え終わってすぐに、チーフに声を掛けられた。 「はい。何ですか?」 「本部の人が来るみたいだから、掃除をして欲しいの。とりあえずー…」 「おはようございまーす」 そこに高峰と有岡が事務所の中に入って来た。 高峰は私を見て話し掛けに来たそうだったが、チーフと話をしていたので諦めた様子だった。 私は掃除をする箇所を聞いて、すぐ取り掛かることにした。 「おはようございますぅ」 無駄に明るい声が聞こえた。 …今日も中村はいるのか。 脚立を持ち出し、店の中へと出る。 「片瀬さん、脚立運ぼーか?」 事務所を出てすぐに有岡が声を掛けて来た。 その足元にはセロテープなど、内職の道具が散らばっている。 「大丈夫。有岡も何か仕事頼まれてるんでしょ?」 「ポップの張り替えは頼まれてるけど」 「有岡はー…」 「あーりおーかくーん」 私の会話の途中を割って、中村が入って来た。 「真梨セロテープ使いたいんだけど…?」 「いや…、俺も使うんだけど」 「そーなの?真梨も急ぎだから、有岡君の仕事手伝うよ」 「いや、ひとりで大丈夫だよ。じゃあ先に使って」 「えー、それじゃあ何か有岡君に悪い~」 ふたりの会話を尻目に、私は掃除場所に移動した。 有岡。頑張れ。
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