03

3/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「他人なれば良かろう。あの男が何をしようが少なくとも目をつぶることはできる……! だが、実の娘に手をかけるほど腐り切っていたとは、気付かなかった……」  広い肩、厚い胸の震えを、ローンダイクは堅固な意志で押え付けた。恐らく、狂行の事実を知った後も、自身が取り乱すことさえ許さなかったのではないかと思わせる。  細く開いた目で、カリアナは感動もなく眺めていた。 「不幸な人だな。愛する者に裏切られ、愛する者に肉親を殺させなければならないとは」 「いや、この依頼は奥方からだ。全てを終わりにする為に」  掛けた言葉に自分を取り戻したのか、目を見開いた。 (下らない……。嫉妬に狂った年増の言いなりにされているだけではないか)  一瞬にして、カリアナの興味は冷めた。  夫にないがしろにされた夫人のどれほど見苦しいものか。旦那を寝取られたと、やんごとない高貴な方が娼館に怒鳴り込んでくるなど、一度二度の話しではないのだ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!