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「他人なれば良かろう。あの男が何をしようが少なくとも目をつぶることはできる……! だが、実の娘に手をかけるほど腐り切っていたとは、気付かなかった……」
広い肩、厚い胸の震えを、ローンダイクは堅固な意志で押え付けた。恐らく、狂行の事実を知った後も、自身が取り乱すことさえ許さなかったのではないかと思わせる。
細く開いた目で、カリアナは感動もなく眺めていた。
「不幸な人だな。愛する者に裏切られ、愛する者に肉親を殺させなければならないとは」
「いや、この依頼は奥方からだ。全てを終わりにする為に」
掛けた言葉に自分を取り戻したのか、目を見開いた。
(下らない……。嫉妬に狂った年増の言いなりにされているだけではないか)
一瞬にして、カリアナの興味は冷めた。
夫にないがしろにされた夫人のどれほど見苦しいものか。旦那を寝取られたと、やんごとない高貴な方が娼館に怒鳴り込んでくるなど、一度二度の話しではないのだ。
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