白紙のページに

2/2
前へ
/8ページ
次へ
 白く暖かい日の光で目を覚ます。開きっぱなしの窓から吹き込む、肌を刺すような冷たい風の中に、微かに春の匂いを感じた。  どこかで小鳥が鳴いている。人の話し声もした。  穏やかな朝。  その朝が、僕は嫌いだ。  ひたすら広がる『無』が怖いから。  起きあがると、枕もとにある分厚い本が目に入る。自然と手が伸びて、それを開いて僕は少しずつ理解していく。  僕はレオン。19歳。戦士ギルドに所属していて、手紙を預かっている。目的は、それをエルフ族の長に届けに行くこと。賢者の塔へ行くこと。それから、学者である父親を探すこと。  足元に大きなリュックがあった。僕はそれを開けて、本に書いてある持ち物が全てあることを確認する。長剣はベッドの下に置いてあるし、ペンダントは首もとにある。 「大丈夫」  ちゃんとある。大丈夫。  そう呟いて、僕は一番最近──おそらくは昨日、書かれた文章に目を通す。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加