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「アレス!」
村の入り口で生真面目にも見張りをしていたピールが、空から降りてきた部下に気づき駆け寄って来る。無事にその姿を拝めたことに安心したようで最初は笑顔を見せていたが、近づくにつれて表情が強張っていく。
「? お勤めごくろーさん、隊長殿」
「どうしたんだその怪我は!」
軽いねぎらいの言葉を無視するピール。手に握られた白い剣だって十分目を引く一品だろうに、アレスの身を心配する辺りは本当に人がいい。
「あー、ちょっと手ひどい反撃を受けてな。けどもう大丈夫だ、霧の原因はもう俺が抑えた。怪我は自分で治せるから大丈夫だ」
そう言って即座に怪我を刻印術で治す。受けたダメージまでは逃がせないが、身体の傷そのものは大したものではなく、すぐに治療が完了した。小さな傷が無数にあっただけで、見た目ほど酷くはなかったということだ。
「そうか。……君に任せてばかりで申し訳ない」
「何言ってんだ、おまえが村護ってくれてるから俺は安心して外に出てられるんだぞ。ほら、とりあえず村長に報告に行こうぜ。隊長のおまえがいなきゃ締まらないだろ」
「わかった。私も何があったのか気になっていたんだ。ところで、その手にある抜身の剣は?」
早速村へ行こうとしていたアレスは今更な質問に躓きかけた。
「それ、普通先に聞かないか……?」
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