第五話~白の魔剣~

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 アレスが村へ帰還し、ピールと共に村長の家へ向かう間、大勢の人間が詰め寄って来た。白い剣を見せるのは得策ではないと考え、コートの下に隠していたのは正解だった。  ピールが余計なことを吹聴したのではと疑ったが、彼らが口々に話す内容からリディが皆に色々と話したらしいことを察する。  また面倒なことにと内心で項垂れつつ笑顔で丁寧な態度を心がけると、村人達はより一層興味を示して話を聞きたがった。どこから来たのか、どうしてルミーラの騎士になったのか、エトセトラ。霧が晴れてきたのも二人の騎士様のおかげだと賛辞を呈し始め、これは長い時間を取られそうだと考えたアレスは一言、 「全てこのピール隊長の功績です」  この言葉に村人の目がアレスから逸れ、一斉にピールへと集中した。その隙に人ごみを抜け村長の家へ直進し、新たに声を掛けられてしまう前に目的の家へ逃げ込むことに成功する。 「おお、術師様、お戻りになられましたか。そんなに急いでどうされました?」  勢いよく入って来たアレスに村長が目を丸くしながら尋ねる。 「いえ、早く結果の次第を報告したいと思いまして」 「なるほど。術師様のおかげでしょう、先程からどんどん霧が晴れ始めております。このように潮の香りもまた感じられるようになってまいりました」 「言われてみれば……」  鼻を動かすと、確かに無臭だった空気に匂いが含まれている。新鮮な海の気配が直に感じられるようになっていた。  勧められた長椅子に腰を下ろし、腰の剣帯を外し、脱いだロングコートで剣と鞘を包み隠して膝の上に置く。剣を隠すことには成功したようで、黒地のシャツの大部分が赤黒く変色しているのを見て目を丸くする。 「そ、その怪我はいったい……」 「霧を発生させていた魔物と交戦した際に少し。刻印術で傷は癒していますのでご心配には及びません」 「しかしそれほどの怪我を……。ご無事で何よりです」  深々と頭を下げようとする村長を抑えながらアレスは苦笑する。 「私の不徳の致すところであり、村長殿が気にされることではありません。ピール隊長であれば傷一つ追うことなく制圧できたのでしょうが」 「何があったのか、お聞かせ願えますでしょうか?」 「もちろん、そのつもりです」
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