第五話~白の魔剣~

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「っと、じじいとの長話に付き合わせてしまって申し訳ありません。お疲れ様でしょう、食事の用意はできておりますが、先に湯あみをされたいとのことでしたら、一度お召し物を預かり、こちらで洗わせていただきますが。お二人のおかげでまた森へ薪の調達しに行くこともできるようになりました、湯を沸かすためにも、衣服を乾かすためにも薪をガンガン使えます」 「あはは。それではピール隊長と相談するとしましょう」  笑って返すアレス。その声に呼ばれたようにピールが入って来た。当の本人は眉間に皺を寄せ、一度村長に騎士の礼を取るとアレスを睨みつけた。 「アレス、おまえな――」 「隊長。村長殿が食事と湯浴み、どちらを望まれるかとのことですが」  話を遮って無理矢理流れを変える。ここで不毛な言い争いをしてもいいことはないと判断したのだろう、一度小さくため息を吐くと、普段の人当たりのいい笑顔に戻って村長に言った。 「では、先に湯をいただきたい。この通りアレスも随分と汚れてしまっていますので」 「わかりました。湯は既に張ってあります。場所は覚えておいででしょうか?」 「昨夜と同じ場所でしたら」 「はい」 「わかりました。よし、アレス行くぞ」 「はっ。それでは村長殿、失礼致します」  二人で村長の家を出て左手に曲がる。ピールに話を聞いてある程度は満足したらしく、遠目に見てくる者はそれなりにいるが駆け寄って来る者はいない。  霧とは別にモクモクと上がる白い蒸気がよく見えた。 昨日も借りた、村で唯一の共同風呂である。村の外を流れる川から地下にトンネルを掘って村の中に設けた井戸へ経由し、再び川へと戻っていく。直接川を地上に開通すると潮風が吹き真水として使いづらくなるらしい。  その水を巨大な四角い桶に溜め込み、下に敷かれた鉄板を介して薪の炎が温めて大きな風呂の完成というわけだ。勿論、周りから見えづらいように垂れ布で囲まれているし、脱衣場もちゃんとある。  基本的に男女別でまとめて入るらしいが、昨日はアレスとピールだけで入浴という贅沢な待遇だった。 「アレス、君に是非言いたいことがあるんだが」  さっきピールを囮にして逃げたことを気にしているらしく、ピールにしては珍しく恨みがましそうに横目でアレスを睨んだ。 「奇遇だな、俺もピールに教えておきたいことがある。まあ、その辺は風呂に入ってからにしようぜ」
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