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プロローグ
戦場を駆け抜けた男がいた。
人間の陣地から飛び交う銃弾、獣から進化した獣人と呼ばれる種族が放つ爪撃。異なる人種が互いに銃や爪を向けあった。
戦況は獣人側の敗色が極めて濃厚。大陸以外から持ちこまれた見た事も聞いたことも無い最新鋭の重火器が血に飢えた獣たちを蹂躙していく。
ひしめきあう戦場の中で戦況を変えたのは、最新鋭の機器とは全く関係の無い一振りの剣だった。
冷たい切っ先の光に気がついた時には、目の前に広がるのは緑の光。
どの重火器より多くの赤い花を戦場に咲かせてた。
緑の光を剣に纏わせ、堂々と一直線に相手を切り裂いていったのは無謀にも男一人だった。
だが、躊躇は無い。正面から堂々と、圧倒的な破壊力を過信するかのごとく振り下ろされる斬撃。それはまるで、光と同時に大木を真っ二つに引き裂く落雷のよう、休む間もなく敵から敵へ。
「【緑の……閃光】」
人々は口々に男をそう呼んだ。
「ひっ」
頭からてっぺんまで真っ二つに裂けた人間の足元で息を飲んだのは、蝙蝠の翼を持つ少年だった。
「なんだ坊主」
剣を抱えた男は歯を見せながらにかっと笑い、少年に向かって手を伸ばした。
「し、ししざ……」
突然、頭にのしかかる大きな手。少年は驚いて口の中で呪文を呟く。噛みあわない歯ががちがちと音を立て、合間から息が零れて中々呪文として言葉にならない。それでも叫ぼうとした。大きく息を吸って再度試みる。
「シザ……」
「首都の方に逃げな。ここから先は俺の独壇場だ」
最後の音を伸ばそうとして開いた口から、間の抜けた声を漏らして少年は困惑した。呪文により形成されかけていた風の渦が詠唱を破棄したことで力なく消えていく。
「み、味方なの?」
男はにかっと笑い、それがさも当然であるかのように答えた。
「強い奴を探す、それだけだ」
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