10人が本棚に入れています
本棚に追加
「【黒の疾風】、そうだ! 俺達にはこのお方がいた」
化け物には化け物を、兵士達の声が活気に満ちる。
剣と剣の重なる甲高い音が数度響いた。
どくん、と剣を握る閃光の腕が脈打つ。緑の光を放つ剣にひきずられるように女の剣が黒い闇を孕む。二つの剣はぶつかりあう度に、光を、闇を、弾けさせた。
男の剣と同じ形状の歪な剣は、男の剣を消して受けようとせずに全てを流す。
黒髪の女は男の目をしっかり見据えたまま、再度同じ言葉を呟いた。
「お兄様に手は出させません」
黒い瞳が緑の瞳を射抜く。強い眼光。
「魔竜の…… 俺と同じ、神の力」
歯を噛みしめたまま笑っていた男が、初めて大きく口を開けて笑った。緑の瞳が大きく見開かれ、筋肉がより一層膨れ上がる。
女の素早い猛攻を力任せに薙ぎ払い、間合いを詰める。
「神…… 何をそんな非科学的な事を」
「ひかががく? んなことどうでもいい」
男の剣が、女の喉元に突き付けられる。
「生と死…… 希望と絶望、聖竜と魔竜、絶対に交わらない二つの物がここにある。それ以上の楽しみがどこにある」
剣の合間を塗って掴みかかると男は女の眼前に自分の顔を突き付けた。
「楽しいなあ、おい」
黒い瞳には、緑の男の笑みがくっきりと映っていた。
最初のコメントを投稿しよう!