術師

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この豪邸は何なのか。  清澄と名乗る男に連れられてたどり着いたのは、8LDKはあると見える、門のついた、立派な日本家屋だった。 「ここが私の家だ」  清澄が指差した表札には、しっかりと「安倍」の文字。 「…大豪邸ですね…」  静香が言うと、清澄は 「無駄に広いだけだ」  と答え、門の前へと足を進めていく。…すると。  ――ぎい。 (…え!?)  門が勝手に開いた。 (じ、自動?…なわけないし…)  きょろきょろと門の周辺を見てみるが、センサーのようなものはない。そもそも門とは侵入を防ぐ為のもので、このような機能は不要だ。 「……、どうした?」  静香に、清澄が庭から声をかける。その表情は全く変わっていない。 「…いえ、何でもありません…」  静香が庭に足を踏み入れると、門はまた勝手に閉まっていく。  そのとき、静香は門の脇になにか得体の知れない違和感を感じたが、置いて行かれるといけないので、そのままその場を後にした。  広い庭を横切り、縁側から上がった所で清澄は足を止めた。 「ここだ」  すっと彼が障子を開けるのを見て、静香はほう、と息を吐いた。  良かった。障子まで勝手に開いてしまったらどうしようかと思った。  清澄に続いて中に入る。その瞬間、静香の視界にあるものが飛び込んできた。  奥のほうに置かれた、文机(ふづくえ)のさらに奥。碁盤(ごばん)のような形をした台に、北斗七星らしき図と漢字がかれた、半球の板が乗っている物体。  ただのオブジェではない。  頭の中の大量の知識のひとつを、一気に引っ張り出す。特徴が一致した。 「……六壬式盤(りくじんちょくばん)!?」 「知っているのか」  障子を閉めながら、訊ねる清澄。 「知ってるも何も…」  六壬式盤は、陰陽師の占い道具の代表だ。映画や漫画にも、時々登場している。しかし、 (あれ?これを使うにはちゃんと修行を積まないといけないんじゃ?)  そもそもあること事態が凄い。埃を被っていないということは、普段から使っている……?
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