7人が本棚に入れています
本棚に追加
(こ、これってパソコン!?狩衣着てるけど、中身は現代人だ…!)
しかも1級となると、ベテランサラリーマンレベルなのではないだろうか。…なんというギャップだ。
「…パソコン、お出来になるんですね…」
「副業で使うからな」
淡々と応えて、彼は静香の手元に目をとめた。
「…それは…」
「あ、これですか?」
静香は表紙を彼に向ける。
「心霊館の暦です。私、陰陽師さんが大好きで。八卦(はっけ)とか真言(しんごん)とか、かっこいいなって思って…」
彼がぴくっと反応した。
「…陰陽師……陰陽道に興味があるのか?」
淡々とした声音に真剣さが滲む。
「え……?」
彼がいきなり品定めするような目になったので、戸惑う静香。思わず1歩後ずさる。
(もしかして、私まずいこと言っちゃった!?)
「あ、あの」
「陰陽道のことを知りたいと、そういうことか?」
心の中のすべてを見透かすような目で、じっと見つめられて、目をそらすことができない。
「は、はい…」
素直に頷くと、彼は元の無表情に戻って1歩下がり、あごに手を当てて静香の全体を眺めはじめた。
いったい、何なのだろうか。
「…おい、娘」
(む、娘!?)
「はいっ」
静香が返事をすると、彼は問題集を棚に戻しながら言った。
「時間はあるか」
「へ?」
静香がかくんと首を傾ける。
彼は視線を静香に戻すと、こんなことを言った。
「私の邸に来い。基礎から教えてやろう」
――なんと。
「いいんですか!?」
彼がこくりと頷いてから、静香ははっとした。あの時はかばってくれたが、このひとが本当に大丈夫だという保障はない。しかし、
(どうせ帰っても、塾さぼったことでどーのこーのとうるさいだけだしなぁ)
それが、彼女の背中を押した。
「じゃあ、お願いします。あ、私は玖珂静香っていいます。貴方は?」
静香が自己紹介すると、彼も目を伏せながら名乗ってくれた。
「………安倍清澄(あべのきよすみ)」
最初のコメントを投稿しよう!