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……違う、そんなことが問題なんじゃない。 多分、怖いんだ。 実物を見たことも、触ったこともない。 そんなモノが、俺の傍にいることが。 なんだろう、上手く言葉に出来ない。 でも何か、迫り来る恐怖。 これは一体……何なんだ? 「紫呉」 「……っ、何?」 1人、よくわからない恐怖に怯える俺の太ももに、母さんの手がのせられた。 母さんの顔を見れば、その顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。 「……抱いてみる?」 「っ、…」 突然の申し出に、一瞬息が詰まった。 抱いてみる?この子を? 「…ど、どうやって?」 不安があからさまに顔に出ていたんだろう。 母さんは小さく笑ってあぐらをかき、そこに美音をのせた。 そうして俺の腕を取る。 「こうして、円を描くようにして…そうそう、そのままね」 「う、ん…」 されるがまま、腕を円のような状態にして待機する。
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