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……そう、割り切らなきゃないのだ。
ボソボソと、背後から聞こえて来る呉さんの声。
その声は。
「……甘い低い声が、耳元で囁く。友紀はその声に、身体が蕩ける様な思いがした。自分の吐き出す息でさえ、もはや自分の物でないと感じるくらい、ペースは男の物だ」
おそらく、今書いている小説の一節だと思う。
淀みなく出て来る言葉の数々に、いつも、何でこんなに緊張してしまうんだろうとため息が出る。
「オッケ、充電完了」
その声で、私の身体は一気に解放される。
緊張感からも、呉さんの腕からも。
呉さんは私を解放したかと思うと、スリープしていたパソコンの画面を付け、早速さっき呟いていた言葉を打ち込んでいた。
そう、呉さんのこの行為に、深い意味は特にない。
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