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顔の輪郭のすぐ下で切り揃えられた、真っ直ぐな黒髪。
覗く首は、少し小麦色に焼けている。
ほっそりとした背中をこちらに向け、正座をしている。
「こんにちは、美音ちゃん」
その女性が首を動かして、顔を見せる。
「……こんにちは」
私はその人に、精一杯の笑顔と挨拶を返した。
その人は……。
「……お久しぶりです、名倉さん」
その人は音さんの、否、父の元同僚の名倉さんだった。
名倉さんは父の最期を知っている、唯一の人。
ライターの仕事をしていて、少し日に焼けていて、顔立ちの整った美人だ。
肌の色と対照的な真っ白な歯を見せるような快活な笑顔が印象的な人。
私はこの名倉さんが……少し苦手だ。
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