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――名倉さんと初めて会ったのは、音さんが死んでしまった日からすぐのことだった。
体型や髪型は今とほとんど変わらないけれど。
今の名倉さんの様子からは想像出来ないくらい、やつれて青白い顔をしていたという印象が強い。
音さんの最期を見届け、それが自分の責任だという彼女を、その時の私は何故か許すことが出来なかった。
今思えば、音さんが急にいなくなってしまった苛立ちに似た悲しみやら苦しみやらをどうしていいのかわからず、八つ当たりしてしまったという感じだったのだろうけど。
そんなことをしたって意味がないと、どこかでわかっていたというのに……。
そんな後ろめたさもあって、私は彼女から一定の距離を保ち続けている。
……ううん。
本当は、苦手なんじゃない。
私は名倉さんに、嫉妬しているんだ。
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