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私が思うに呉さんは、名倉さんが……好き。
多分それは名倉さんもで、2人は付き合っているのかもしれない。
名倉さんは今日みたいに、時たまうちにやって来る。
何かしに来るわけじゃない。
ちょっと話をしに来たり、お菓子を持ってきてくれたり、そんな些細なこと。
名倉さんはライターだから、小説家である呉さんと物書き同士、話が合うんだろうな、と。
以前の私はそう思っていた。
だからこうやってうちを訪れるのだと、思っていた。
でも、それは違ったみたいだ。
……それはきっと今、行われている。
私がいなくなると始まる、2人の静かな時間。
もちろん、間近で見たことも聴いたこともないからわからない。
というより、見たくも、聴きたくもない。
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