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「もう首すわってるから、大丈夫だと思うけど」 そう言って母さんは美音を抱き上げ、俺の腕の中に入れるようにして抱えさせた。 グッ、と腕にかかる想像以上の重みに、身体を緊張感が走る。 「そう。もうちょっと首、支えるような感じで」 「こう、かな…?」 「そうそう、そんな感じで……」 じんわり腕から伝わって来る体温。 落としちゃいけないという思いからか、腕に力が入る。 「……っ」 服を小さな手で掴まれた時、今まで味わったことの無い感覚に、胸がいっぱいになった。 小さくて、想像以上に小さくて。 ふにゃふにゃと柔らかくて、温かい。 本当に頼りないのに、服を掴む力は思いがけず強い。 「(そうか、これが……)」 生命というものなのか……。 妙にそのことが胸に迫って来て。 「ね、可愛いでしょう」 「……うん」 俺の肩越しに母さんが美音を覗き込む。 そうして、ほんのり桃色に染まった頬を人差し指でつつく。
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