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ケーキを冷蔵庫にしまって自分の部屋に戻った私は、ケーキに夢中すぎて置いておいた鞄を持ってくるのを忘れていたことに気付いて、急いで居間に戻った。
その時だった。
居間の扉が開いていたせいで、見えてしまったのだ。
呉さんと名倉さんが、寄り添う姿が。
名倉さんは俯いて肩を震わせていて、どうやら泣いていたようだった。
そんな名倉さんの肩を支えるようにして、呉さんは名倉さんに寄り添っている。
会話の内容までは聞こえなかった。
名倉さんが何故泣いているのか、皆目見当がつかなかった。
でもその時の、何かを堪える様な苦しそうな、でもどこか愛おしそうな呉さんの横顔を見て。
見てはいけないものを見たような気分になって、咄嗟に逃げてしまったのだ。
そして同時に、悟ったんだ。
呉さんは名倉さんのことが好きなのかもしれない……と。
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