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「美音、あのさ……」 呉さんが静かに口を開く。 呉さんの顔は見えないから、今、呉さんがどんな表情をしているのかわからない。 でも、少し言いにくそうにしていると感じるのは、気のせいだろうか。 「名倉さんの、ことなんだけど……」 「っ、呉さん!」 「っ……」 “名倉さん”という単語に、身体が咄嗟に反応した。 呉さんの言葉を遮るように、私は呉さんの名前を呼んでいた。 呉さんが驚きで息を飲んだのが、空気の揺れで伝わって来る。 「……な、名倉さんのお土産は、何だったの?」 「え……」 強引な話題の転換に、呉さんは呆気に取られたような声を出した。 けれど、少し間を置いた後に「……バームクーヘン、だったよ」と呟くように告げる。
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