-1-

8/11
前へ
/602ページ
次へ
「あーん、柔らかいー。あんたたちにもこんな頃があったんだからねぇ、ビックリよ」 「……」 そう言いながら俺の頬を人差し指で突き刺してくる母さんを、無言で睨みつける。 「今じゃこうやって母親を睨みつけて来る始末…悲しいよあたしは!」 「やめて母さん、美音が起きる」 うう、と顔をしかめた美音を見つめながら、泣き真似をする母さんをばっさり切り捨てる。 「はいはい、わかりましたよー。じゃあご飯の支度するから、その間美音ちゃんのこと見ておいてよ」 「え!?」 肩の少し下くらいまである髪を結びながら、母さんは立ち上がる。 「ちょ、母さん!兄さんは!?」 このまま美音を抱えたままでいるのはなんとなく不安で、父親である兄さんに任せようとしたけど。 「仕事行くついでに買い物してくるって出てったけどー?」 「は……」 早速子育てを放棄していきやがった。 なんて無責任なんだと兄さんに怒りを覚えながらも美音に罪はないので、仕方なく、母さんと同じようにあぐらをかいたところに美音を寝かせ、テレビをつけた。 音量を出来るだけ絞って、美音を起こさないようにする。
/602ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加