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言うか、言うまいか。
カレンダーに目をやりつつ、逡巡していると。
「……美音」
食卓から居間のソファに移動した呉さんが、手招きしながら私を呼んでいた。
「何?」
近づくと、無言でソファの、両太ももの空間を叩いて私を見つめる。
……座れ、ということだろうか。
だとしても、何故呉さんの脚の間に座らねばならないのだ。
密かに眉根を寄せつつ、無視して呉さんの隣に座ろうとすると。
「こっちだよ」
「わ」
腕を引っ張られ、バランスを崩す。
よろけて行き着いたのは、呉さんの脚の間だった。
「なっ……!」
その体勢に顔に熱が集中し、反射的に逃げ出そうとすると。
「はい、捕獲ー」
呉さんのしなやかな腕が私のお腹に巻き付き、私を拘束した。
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