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目に見えない重圧に押しつぶされそうになりながら、必死で頭を働かせて、言い訳を考える。
と、その時。
「……何だ……」
はぁ、という大きなため息と共に聞こえた、呉さんの声。
その声には安堵が含まれていた。
「……っとにお前は……」
「え?」
そう呟くと同時に、呉さんが後ろから私を抱きしめた。
「……不意打ちで、そういう可愛いこと言ってくんなよ……」
「っ……」
耳元で囁かれ、収まりかけていた熱が再び戻って来る。
「え、えと……」
首に掛かる呉さんの吐息。
のしかかる体重。
巻き付く腕の温度。
全ての要素が、私の正常な思考を閉じ込める。
「いいよ、美音。その日の俺は全部、美音にやるよ」
「え……」
呉さんは顔を上げると、私の顔を覗き込んでフッと微笑んだ。
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