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――その日は平日だったから、夕方までは学校だった。 呉さんも何も予定がないとはいえ、多分家で何かしらネタを探したり下書きをしたりしているんだろう。 「(早く帰ろう)」 今日最後の講義が終わった瞬間、教室を飛び出してきた。 今日の夜は、ずっと呉さんと過ごせる久々のチャンスなのだ。 呉さんから、今連載している作品がもうすぐ完結するから、少し手直しして単行本になるって聞いている。 そうなったら、今よりもっと忙しくなるはずだ。 そうしたらまた、呉さんと過ごす時間が減ってしまうだろう。 今日は、その期間の寂しさを我慢するための、補充日なのだ。 「(楽しみだな……)」 緩む頬を必死で引き締めながら、帰路を急ぐ。
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