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スチール製の、ガラス張りのドアを開くと、外観とは打って変わってこげ茶色と白を基調にした、暖かみのある内装が見えた。 一部の壁にレンガが埋め込まれているのも変わっていなくて、なんとなくホッとした。 「予約していた飯島ですが」 「はぁい」 カウンターの方に向かった呉さんが声を掛けると、歌うようなソプラノボイスが聞こえて来た。 すぐに声の主が顔を出し、にこ、と笑う。 「お久しぶりですね。いらっしゃいませ」 「どうも、ご無沙汰してます」 長い茶髪を三つ編みにして垂らし、シックなピンクのエプロンを付けた女性が出て来て、愛想よく頭を下げた。 呉さんも頭を下げるので、倣って私も頭を下げる。 この人は、この店の店長兼料理人の方の奥さんだ。 “お久しぶりですね”と言っていたということは、多分私たちを覚えていてくれたんだろう。
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