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「ちょ、ちょっと待ってね」
自然と赤くなる顔を俯いて隠しつつ、プラスチックの箱から腕時計を取り出す。
留め具を留めようとする手が震えるのは、多分気のせいじゃない。
「ど、どうかな」
頬杖をつくように左腕を顔の横に立て、何とか着けることが出来た腕時計を呉さんに見せる。
「んー……」
その腕時計と私を、交互に見比べていた呉さん。
無表情に近い、少し険しさを含んだ表情に、ドキドキしながら呉さんの言葉を待っていると。
「ん、似合ってる」
「ッ……!」
無表情から一変。
あんまり優しく、しかも嬉しそうに呉さんが笑うから。
収まりかけていた顔の熱が、また上昇してしまった。
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