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「……あんまり見られると、ちょっと照れるんだけど」
「っ」
呉さんにそう言われ、我に返った。
よく見れば呉さんの頬が少し赤い気がする。
「ご、ごめんっ」
弾けるように視線を逸らし、街灯に照らされる地面を見つめる。
ザリザリと、足を動かす度に響く、砂と靴底が擦れる音。
時々通る車や、自転車のライト。
街灯に照らされて、時々キラキラと光る砂の粒。
夜って、不思議だ。
普段なら気にも留めないようなことが、異様に気になる。
時折訪れる静寂。
聞こえるのは、キィキィというブランコに金具が唸る音と、お互いの息遣いと、自身の心臓の音。
「(あ、どうしよう)」
もし、心臓の音が聞こえていたら。
きっと今の心臓の音は、呉さんを想って鳴っている……。
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