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その時、林くんはようやく呉さんの存在に気付いたらしく、少しだけ目を見張った。
そのまま私を見下ろし、「……どちら様?」と問いかけて首を傾げる。
「……もしかして、彼氏?」
「ちっ、違うよ!」
そして急に思いも寄らないことを言われ、声が裏返ってしまった。
「呉さん……でなくて、こちらの紫呉さんは私の叔父にあたる人なの」
「へぇ……」
呉さんの腕を軽く触るようにしながらそう紹介すると、林くんはスッと目を細めて呉さんを眺めた。
その視線を追うように私も呉さんを見上げると、呉さんも少し目を細めて、表情を完全に消していた。
少し遠くに設置された街灯の光が呉さんの顔に当たって影を作り、それが綺麗なんだけど、どこかしら怖い。
「……なんだ、叔父さんか」
「は?」
ボソ、と林くんが何かを呟き、その言葉に呉さんが眉をひそめる。
私には聞こえなくて「え?」と聞き返したけど、「何でもないよ」と誤魔化された。
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