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ニコニコと人当たりの良さそうな笑顔を見せる林くんとは対照的に、呉さんはそれっきり口を閉ざし、険しい表情を浮かべている。
そんな2人の間の妙な空気を打開したくて、私は半ば強引に「そ、そういえばっ」と話を切り出した。
「そういえば林くん、なんでこんなところにいるの?」
実は林くんが姿を現した時から気になっていたこと。
何故ここに林くんがいるのか。
私の記憶が正しければ、林くんは県外出身者だ。
私はいわゆる自宅生で、ここから電車と徒歩で大学に通っている。
確かに何戸かアパートはあるけれど大学に近くないし、ここで一人暮らしする学生はいないだろう。
だからこんな住宅街に林くんがいるはずは……。
色々な仮説を立てつつ思案していると、林くんが「あぁ」と声を上げた。
「実は俺、この辺り……って言っても少し離れているけど、まぁここら辺に親戚がいてさ。親戚んちに居候してんだわ」
「え、そうなの!?」
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