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「……美音は、アイツの……さっき会った彼のこと、どう思ってる?」
「え、林くん?」
急に、それこそ想定していなかった名前に、素っ頓狂な声が出た。
そんな私とは対照的に、真剣な眼差しで私を見つめる呉さん。
暗闇に目が慣れて来て、呉さんの表情がさっきよりもわかるようになってきている。
その瞳に見つめられてなんだか居心地の悪さを感じ、私は呉さんから顔を逸らした。
「そ、うだね……。ゼミが一緒なんだけど、いつも話しかけて来てくれて……というか、気にかけてくれるというか……」
なんでここで林くん?
そう思ったけれど、そんなことを聞ける雰囲気ではなかったので、私は率直な林くんに対する印象を述べた。
「頭もそこそこいいみたいだし、皆に人気はあるし……」
「そういうことじゃなくて」
「え、……っ」
精一杯の答えを否定されただけでなく、逸らした視線を、呉さんが私の顔を覗き込んだことでまた合され、一瞬息が詰まった。
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