203人が本棚に入れています
本棚に追加
けたたましい音を立てて、何かが倒れた。
「……ッ、あ」
その音で、私たちの意識は一気に現実に引き戻される。
呉さんは急に冷静になったのか、バッと私から身体を離した。
熱かった身体が急激に冷たい風にさらされる。
「……ッ、おやすみ……」
そう言って私の頭をポンと撫でると、呉さんは逃げるように家の中へと入って行った。
私は、と言えば。
「(ほうき、倒れてる……)」
どうやらさっきの音の原因であるらしい、横倒しになったほうきを見て呆然とするしかなかった。
「(あ、今、何時……)」
上手く働かない頭の片隅に残る常識的な部分が、若干正常な動きを見せる。
もらったばかりの腕時計を見ると、日付はとっくに超えていて。
「(あぁ、なんということだ……)」
22歳当日の誕生日プレゼントは、呉さんのキスになってしまった……。
そんなことを考えながら、私は先程の熱をこもらせている身体を持て余していた。
最初のコメントを投稿しよう!