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それにしても、名倉さんは毎年こうやって何かしら誕生日に持ってきてくれる。 最初は、音さんの最期に負い目を感じてのことだと思っていた。 音さんが私の誕生日を祝えないから、その代わりに祝おうとしているのだろう……と。 でも、さすがにこの歳になってまで誕生日を真面目に祝われると、責任感だけではない何かを感じる。 もはや習慣化しているような、祝うのが当然だというような……。 誕生日を祝ってもらえるのは、何歳になっても嬉しい。 だからこうやって、毎年何だかんだと祝ってもらえるのはとてもありがたいんだけど、なんせ今は……。 「(……気まずい)」 最近大学はどうだとか、取材で行ったところがどうだったとかと、ちまちまと話題を提供してくれる名倉さんに、相変わらず私は引きつった笑みしか返せないでいた。
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