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「どちら様で……?」
そう聞こうとした私の声は、呉さんの声にかき消された。
「……詩織?」
詩織……?
そう名前を呼ばれた彼女は、呉さんに視線を合わせると、ニコッと綺麗に微笑んだ。
「……久しぶりね、紫呉」
……どういうこと?
私と同様に、名倉さんも困惑したように眉根を寄せている。
「お前……なんでここにいるんだよ?」
怪訝そうな顔を見せる呉さん。
なにやらただならぬ気配を感じる。
その時。
「……貴方が、美音ちゃんね?」
ずっと呉さんの方を向いていた視線が、突然私に向けられる。
“詩織”と呼ばれた彼女は、その微笑みを崩すことなく、事もなげに告げた。
「私が、貴方の母親よ」
………………は?
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