-8-

2/14
前へ
/602ページ
次へ
「……え」 何を言われたのか、一瞬理解出来なかった。 「……どういうことだ、詩織」 呉さんが詩織さんの綺麗な顔を睨みつける。 でもその声には怒りというよりも、困惑が含まれていた。 名倉さんも口元に握りこぶしを寄せ、視線を彷徨わせている。 しかし堪えた様子は見せず、むしろ飄々とした態度で、詩織さんは「あら、本当に知らないのね」と心底驚いた様子を見せた。 「いわゆる“お見合い”よ、“お見合い”」 「“お見合い”……?」 思いも寄らない言葉に、息が止まりそうになった。 それは呉さんも名倉さんもそうだったようで、目を見開いて詩織さんを凝視している。 「その様子だと、本っ当に知らなかったのね」 詩織さんはクスクスと楽しそうに笑っているけれど、こっちにとっちゃあ笑いごとじゃない。
/602ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加