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「もう貴方、40過ぎたのよ、わかるでしょ？仕事が充実してるのかなんなのかわからないけれど、そろそろ身を固める頃だと思わない？」
「……」
的確な指摘に、呉さんは返す言葉も見つからないようだ。
ただ苦し紛れのように「俺は美音の父親じゃねーぞ……」と呟いている。
「まぁ……今日はいいわ。また改めて連絡するわね」
「それじゃ」と言うと、詩織さんはびっくりするくらいあっさり帰って行った。
本当に、嵐が去って行った……という感じ。
その後の静けさと言ったら、恐ろしいほどの静寂だった。
「あ、の……」
その静寂を破ったのは名倉さん。
恐る恐るといった様子で、若干引きつった笑顔を見せている。
「じゃあ、あたしはこれで……」
「あ、はい……」
こちらもそれ相応のぎこちなさで見送ると、玄関は異様なまでの気まずい沈黙に襲われた。
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