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「呉さん……ちゃんと、説明してほしい」
小さく震える呉さんの身体を抱きしめ返してそう伝えると、私を抱きしめる呉さんの腕にさらに力が入った。
しばらくその状態が続き、ようやく呉さんの腕から力が抜けて、解放される。
「あぁ、わかった……」
やっと見えた呉さんの表情はまだ少し硬かったけれど、口元は緩く弧を描いていた。
「(そういえば……)」
久々に呉さんの顔を見たな……。
視線はまだぎこちないけれど、でも久々に呉さんの目を見た。
黒く、透き通っていて、どこまでも吸い込まれそうな瞳。
今は不安や動揺からか、それが少し揺れている。
この瞳に、私以外の人が映る日が本当に来るのかもしれない、と私の胸はキリキリと締め付けられた。
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