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「――詩織は、母方の……お前の祖母ちゃんの方の従妹なんだ」 居間のソファに深く腰掛けた呉さんが、どこか遠くを見つめたまま口を開いた。 私はそんな呉さんの横に腰掛けて、呉さんの話に耳を傾ける。 「母さんはな、俺の父さん……つまりお前の祖父ちゃんに当たる人と離婚してから完全に実家との繋がりを絶っていたんだ」 父さんはどうも外に出たがる気質だったらしくて、外に女の人を作って出ってったんだ、と呉さんは困ったように笑った。 初めて聞いたお祖父ちゃんの話。 どことなく音さんと似ている感じがして、少し懐かしい感覚を覚えた。 「ほとんど向こうから一方的に切られたって感じでさ……。俺ははっきり言って、昔から母方の親戚には悪い印象しかなかったんだ」 だからあんなに嫌悪感を隠そうとしていなかったのかと、先程の呉さんを思い浮かべる。
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