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「――え。嫌、だ」 否定の言葉は、あまりにも自然に、はっきりと、私の口から出て来た。 その自然さに、自分でも驚く。 呉さんもそこまではっきり否定されるとは思っていなかったのか、驚いた様子で私の肩から頭を離して体勢を戻す。 呉さんが、結婚。 それは本来喜ぶべきことであって、私なんかが口出ししていいことじゃないのに。 「く、呉さんに……結婚してほしく、ない」 「美音……」 呉さんと繋いでいる手に、自然と力が入る。 私がもっと大人だったら、「呉さんももういい歳なんだから」と、笑ってそう言えたかもしれない。 そう言えたら、かっこいいのかもしれない。 でも。 そんなこと。 思ってもいないこと、言えない。
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