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呉さんは、名倉さんのことが好きなのかもしれない。
呉さんは、詩織さんと結婚してしまうのかもしれない。
呉さんがこれからどうするのかはわからない。
でも私は、ずっと、ずっと、ずっと。
呉さんを想ってきたのに……。
その想いを無視して抑え込んで、呉さんに「結婚していいよ」なんて言えるほど、私は大人じゃない。
けど。
その想いを、口にしていいか悪いかがわかるくらいには、大人だ――。
膨れ上がる想いを抑え込もうと、俯いて唇を噛み締め、ギュッと目を瞑った時。
「美音」
名前を呼ばれて反射的に顔を上げると、既に呉さんの綺麗な顔が目の前に迫っていた。
「っ、ん……!」
頭と頭がぶつかるように私と呉さんの唇が重なる。
「ん、ん……」
啄むように唇を奪われる度に、吐息のような声が漏れる。
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