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俯いて、最初よりは減ってしまった麦茶を覗き込む。 そこには、苦しげに顔を歪める男が映っていた。 完全に言葉を失ってしまった俺を横目に、母さんはため息をつく。 「……まぁ、紫呉の気持ちも、わからないではないけどね」 「え……」 母さんは小さく笑って、麦茶の入っていたグラスを両手で囲うように握りしめた。 「紫音は昔から妙に秘密主義だったからね。それを不安に思う時もあったけど…もうね、何というか、諦めたのよ」 「諦め……た?」 「そう」 思いがけずネガティブな言葉が出てきて、一瞬言葉が詰まってしまった。 「諦める……というよりは、信じるって言った方が聞こえはいいかもしれないね」 困ったように眉をハの字にして、母さんは笑う。
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