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ガタ、という椅子が動く音で、俺は思考の世界から現実へと引き戻された。 「私、トイレ行ってくるからちょっと待ってて」 それは美音だったらしく、美音は立ち上がって鞄を持つと、喫茶店の奥のほうにあったトイレへと向かっていった。 美音の不在――それはおっさんが2人きりになるということを表していて。 「(……気まずい)」 急に重たい沈黙が降りてきて、特に意味があった訳ではないけど、俺は兄さんの方へ一瞬視線を向けた。 その時。 「っ」 あまりの衝撃に息がつまって、思いっきりむせてしまった。 反射的にコーヒーカップに手を伸ばし、すっかり冷めたコーヒーを一気に飲み干した。 「に、兄さん、っ、何やってんだよ!?」 「え、何って」
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