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「やっとまともに紫呉と話したなぁ」 独白のように小さな声で呟いて、兄さんはニカッと白い歯を見せた。 「あんまり紫呉と話したことないよな」 「兄さんがあんまり家にいないからじゃないの」 「だよなぁ」 ハハ、と楽しそうに笑う兄さん。 何がそんなに楽しいのか、俺にはさっぱりわからない。 「……確かになぁ」 ふと静かになって、兄さんは前髪をくくっていたリボンの付いたゴムを取った。 「俺、全然家にいなかったもんなぁ……」 「……兄さん?」 急に暗い声を出す兄さん。 妙に胸騒ぎがして、思いがけず怪訝そうな声が出た。
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