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「……ってか、仕事、落ち着くのかよ?」
頭を撫でようとして来る兄さんの手を必死で押さえつつ、ふと気になったことを聞いてみる。
「あぁ、そうなんだ。次の撮影さえ終わればだいぶ時間が空くんだ」
「へぇ」
特別興味も無かったので、返事は適当になってしまった。
……まぁ、いいか。
「そしたらどっか出掛けるか!今度は母さんも一緒に!」
「いや、俺はいい」
「そんなこと言うなよ~!どうせそんなに小説書いてないんだろ?」
「さりげなく酷いこと言ってくんなよ!」
人目もはばからずギャーギャー騒ぐ俺たち兄弟のもとに美音がトイレから帰って来て、とりあえず俺たちはここから出ることにした。
……次はどこに行くかを話しながら。
――でも、俺たちはまだ知らなかった。
こんな些細な約束が、一生守られることはない……ということを。
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