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「美音が、迎えに来てって。雨だし、あんた暇なら行って来てよ」 母さんが受話器を置きながら説明する。 どうやら美音から電話がかかってきたようだ。 「あー、はいはい」 朝晴れてたから、きっと傘持ってかなかったんだろうな、美音。 暇、という言葉をあまり肯定したくはないけど、確かに小説も一段落ついたし……迎えに行ってやるか。 キーを受け取り、玄関へ足を向けた時だった。 「っ」 けたたましい警告音のように、電話が鳴る。 近くにいて不意打ちだったからか、思いがけず心臓が跳ねた。 「また美音からかねぇ……はい、もしもし?」 電話代の傍に立っていた母さんが電話を取る。 美音からかの電話かと思い、俺も近くで立ち聞きしてみると。 「はい、はい。そうですけど…………え?」 軽快な返事をしていた母さんの顔が、表情が、コンクリートで固められたかのように動かなくなった。
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