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今も名倉さんの話を聞いているのだろうかと思ってしまうくらい、虚ろな目で顔を俯けている。 兄さんの死を告げた時、美音は思ったより冷静だった。 事故で死んでしまったんだと言ったその瞬間はやはり衝撃的だったようで、表情を固めていたけれど。 ただ「そう…」と、淡々としていたのが、俺にとって結構意外なことで、妙にはっきりと記憶している。 それからはずっと、これといった感情を持つことなくただただ過ごしている、というのが美音に対する印象だ。 こうしている今だって特に泣いたり怒ったりするわけでもなく、本当に座っているだけ、という感じだった。 と、名倉さんの視線が美音を捉えた。 「美音ちゃんも……お父さんから話は聞いています」 その時、ようやく美音の目に少し輝きが戻り、名倉さんのことを見た。
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