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# # # ――兄さんの死は、不運の、始まりに過ぎなかった。 葉が散って枝を惜しげもなく晒していた木の枝が、白く雪で覆われた頃。 降り積もる雪を横目に、ちらほらと入っては出て行く人を眺めていた。 今日は、母さんの葬式だ。 実は兄さんの葬式が終わってすぐ、母さんにガンが見つかったのだ。 既に転移が始まっていて今すぐ治療が必要だと言われたけど、母さんは治療を望まなかった。 そうして、今に至る。 思えば兄さんが亡くなってからというものの、母さんは覇気がなかった。 もしかすると、兄さんを追いかけたいという気持ちが、どこかしらあったのかもしれない。 あまりにもあっけなく、いなくなってしまった。
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