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# # # 「単刀直入に聞くけど兄さん、あの子、誰との子ども?」 こじんまりとしたテーブルを挟んで、俺は兄さんに詰め寄った。 「大学はどうだ?紫呉(シグレ)」 にこにこと、人当たりの良さそうな笑みを浮かべる兄さん。 あぁ、また始まった。 「俺の話、聞いてた?」 「楽しいか?どんなこと勉強してるんだ?」 「…まぁ、色々と」 はぁ、と大きいため息が出た。 兄さんが連れて来た女の子――名前は美音(ミオン)というらしい――は母さんが今、あやしている。 あれから目が覚めて、大泣きしてしまったのだ。 「可愛いだろう、美音。生まれてまだ8ヶ月でね、6月24日に生まれたんだよ」 「兄さん!」 懲りもせずに全く見当違いなことを言ってくる兄さんに、俺は思わず声を荒げてしまった。 こうやっていつも、兄さんは大切なことをのらりくらりとかわしてしまう。
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