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美音にとって兄さんと母さんの死は、表面的には父親と祖母の死だけど、実際は父親と母親の死と考えていい。 明確な母親のいない美音にとって、母さんは“おばあちゃん”ではなく“母親”だった。 13歳という年齢で肉親を2人も亡くした美音の心境は、推して量れるものではないだろう。 しかし、美音にとっての苦しみはこれだけでは終わらなかった。 言い出したのは、親戚の誰かだった。 引きこもりな性格の所為か否か、俺は親戚の顔をあまりよく覚えていない。 そもそも、母さんは父さんがいなくなってからというもの、決まりが悪かったのか実家に顔を出さなくなっていた。 故に、俺は親戚との関わりがほとんどなかった。 それを言い出した親戚の誰かは、多分母さんの兄、つまり俺にとっての伯父にあたる人だと思われる。
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